JOL 的 リレー小説


タイトル未定



 現在進行中のリレー小説はこちらからどうぞ。(直リンは何故かはじかれる模様)





十三周目二番



「ふむ、まぁ待て。用事はまだ終わっていない」
 キルウィスは部屋 ―― と言えるほど立派なものでもないが ―― を出て、皆の集まっている場所に向かう。とりあえずは、エルフィスもそれにつづく。
「キルウィス様?」
「地上と連絡が取れなくなっているのですが、何かあったのでしょうか?」
「セレンティア様がお戻りになられないのですが」
 それに気付いた兵は、キルウィスに集まってくる。皆、外から来たものがもたらす情報を求めていた。
「セレンティアは戻らん。クレイトンも死んだ。上にいた連中も、死ぬか教会に捕まったか」
「えっ……」
「そんな!」
「地上にいた部隊が全滅?」
 地上にいた自分達の仲間は一夜にして壊滅し、更に指導者たる『水』と『風』もいなくなったと知らされた兵たちに混乱が広がる。不安に駆られるこの場にいる者達の注目がキルウィスに集まる。
「キルウィス様、我々はどうしたら……」
「《組織》の総意を伝えに来た。《組織》の目的は教会に装置を使わせない事。手段は問わない。…… そういえばそこに、《巻物》 と 《3つの鍵》 を持つ余所者がいるみたいだがの」
「なっ!? てめぇ!」
 今度は、《巻物》と《3つの鍵》を持つエルフィスに注目が集まる。《装置》を使わせなくするのなら、《鍵》を1つでも奪ってしまえばいいのではないか。兵達とエルフィスの間に緊張感が漂いだす。エルフィスはまた、この場で一番の強敵であろうキルウィスにも注意を向ける。が、一切の敵意が見えない。
「それと、陸では修道騎士どもが突撃の準備を進めておる」
「なに!?」
「ここが見つかったか!」
「くっ、この戦力で戦えるか?」
 自分達の全く知らないうちに事態は急変し、追い詰められている。その事実に兵達は軽い恐慌に覆われる。一体どうするべきか。その指示を仰ごうとこの場で一番位の高い『地』の者に再び注目が集まる。だが。
「以上だ。さて、用事も終わった事だし、私はこれで失礼するよ」
 そしてもう一度、皆に衝撃が走る。キルウィスは ―― 『地』を冠するこの者は ―― 自分達に全く関心がない。その目、その態度がそう語っている。
「キルウィス様!?」
「そんな! 我々はどうしたら!?」
「知らんよ。化石めいた負け犬と、這い蹲る地虫なんぞに興味もない」
「……はっ、お前はただの伝言係りか」
「これ自体ただの気まぐれにすぎんよ。些かの暇つぶし程度にはなろう。……ふむ、このような場所ではやりづらかろう」
 そう言って、呪文を唱え始める。兵達も一瞬身構える。エルフィスは兵の一人を捕まえ盾として、同時にキルウィスにナイフを投げる。それを一瞥しただけで、キルウィスを守るように土の壁が生まれる。呪文はつづく。エルフィスは距離をとり遮蔽物に駆ける。兵達は、キルウィスを味方と判断していいのかわからず、呆然としている。呪文の声が、止む。
「うわ!?」
「な、なんだ!?」
「地面が!」
 この隠れ家にいる全ての者の足元が沈みだす。沈んでしまったら、片足すら上げる事も出来ない。それは、泥に変わって沈むのではなく、硬い地面に沈んでいく故に。
「さて、つまらぬ貴様らでも、私を楽しませてくれる事を祈ろうか。せいぜい最後まであがいてみせい」
「くそ! こんなことで!」
 この場にいるものの能力ではどうすることもできず、また何かをする程の時間もなく。皆地面に飲まれていく。閉ざされる意識。そして……。

「……っ!?」
 次に目を覚ました時、状況は ―― エルフィスと兵達の位置関係は変わっていなかった。だがそれ以外は一変していた。キルウィスは居らず、周りには木々があり、頭上には空があり、向こうには湖が見えた。地上に出たのだろう。それ自体は喜ばしい事ではある。だが。
「ここは……地上か?」
「な、貴様ら何者だ!?」
 だが目の前には鎧に身を包む騎士達。その右胸には聖印。地上に出た事は喜ばしいが、ここは突撃準備中の聖堂騎士の直ぐ傍であった。
 準備中に突然後ろに現れた兵士達に驚く修道騎士。事態が急変し、その上指導者に見捨てられた兵士達。そして、周り中敵だらけの中、1人きりのエルフィス。
( そったれ! どうしろって言うんだ……)
 動揺が収まるのは直ぐではないだろう。その間に策を練らなければ。


斎祝 (05.11.10)
前へ目次へ次へ
inserted by FC2 system