JOL 的 リレー小説


タイトル未定



 現在進行中のリレー小説はこちらからどうぞ。(直リンは何故かはじかれる模様)





二周目一番



「さて、あそこに見えますのが今回の目的地、教会墓地でございま〜す」
「もー、ピクニックに来たんじゃないんだよ、ジェッター」
 少し歩いた位置にある、数年前から使われていない教会。そこが夜中に不気味な物音がするという場所だった。
「まぁ、何があるか分からないからちゃんと警戒して行こう」
「了解。分かってますよ〜」
「……今にも鼻歌歌い出しそうな調子で言われてもねぇ」
 シエーアの言うとおりジェッターは気楽に進んで行っている様に見える。が、見るものが見ればジェッターが直ぐに動き出せる様に構えており、小さな物音にも注意を払っている事がわかるだろう。出会ってまだそう時間も経っていないが、シエーアとジェッターは常にこういう感じなのであろう事は直ぐに分かった。

「どうだい?なにか感じるかい、ティオレちゃん」
「いえ、特には」
 墓地は静まりかえっており、不気味な物音とやらも聞こえない。
「ふむ……じゃ他の所行ってみるか」
「そうだね。じゃ、教会の中に行ってみようか」
 と歩き出そうとした時……ォォォォォォオオオオオ……と言う音が聞こえた。
「今の……」
「ああ、聞こえたぜ……教会の中のほうからだな、きっと」
「よし、行くぞ」
「待ってください」
 今度もまた、歩き出そうとした時にそれは起こった。地面が盛り上がり、そこから無数の腕が出てきていた。そして這い出てくる亡者たち。
「……囲まれたみたいです」
 あるものは腕が半ばから取れ骨が見えている。あるものは眼球が飛び出し、またあるものは内臓が飛び出している。人の形を保っているが故に嫌悪感を呼び起こすもの。それは永久の眠りから起こされた人の骸――ゾンビ。そして、肉が全て崩れ落ち、骨だけで動いている者――スケルトン。それが4人をぐるりと囲んでいた。
「うー。スケルトンに成っててくれた方がいいよ〜」
「よし、それじゃティオレちゃん、よろしく」
「……仕方ありませんね」
 そういって、どこか乗り気でない様子で聖印――ホーリーシンボル――を掲げた。しかして……何体かは崩れ落ちたが、状況は全く改善していない。
「あー……シエーアといい勝負かもな」
「むっ、それすっごい失礼だよ。ボクにもティオレにも」
「いえ、事実ですのでかまいませんが」
「相手の動きが遅いからってノンビリしてるなよ。……囲まれるとまずいな。一点突破するぞ」
 そういって、剣と盾を構え教会のあるほうに向かって駆け出すクオン。まずジェッターが短剣を抜き放ち、シエーアが手持ち無沙汰な様子で――複数の《生ける死者》に有効なスペルがないのであろう――それを追い、そしてティオレは……見慣れない武器を両手に持っていた。
「なんか、変わったクロスボウだね」
「私はこれが専門です」
 そういって掲げて見せたそれは、通常のクロスボウの上にボルトの入った箱が載っていた。それは1回1回ボルトを装填する必要のなく、連射が可能なクロスボウ――連弩、リピーティング・クロスボウ、リピーターと呼ばれるものである。それを両手に構え前方に向けるが……両手を広げ左右の敵に向け、放つ。4人が組んで、これが始めての戦闘である。しかも、ティオレは自分がクロスボウを使うとは言っていない。他の3人も、まさか聖職者であるティオレがそんな武器を使うとは考えていなかったから聞かなかったのであろう。例え言ってあったとしても、後ろからの射撃などよほどの信頼関係がなければ出来ないだろうが。左右それぞれ6発ずつ、計12発のボルトが一息に放たれた。3体程は足がもげ、骨が砕け歩く事が出来なくなったが大して効果が上がっていない。《生ける死者》には痛覚もなければ肉にも意味がないのだろう、ボルトが刺さろうがお構いなしに歩いてくる。
 クオンが剣と盾を構え、そのまま体ごとぶつかってチャージし道を開く。開いた場所をティオレとシエーアが走りぬける間はジェッターが牽制する。そのまま教会の壁まで行き振り返る。
「一体一体は大した事ないんだが、こう多いとまずいな」
「えーと、ひぃ、ふぅ、みぃ……いっぱい」
 その数、十数体。もちろん、ゾンビやスケルトンの2、3体は物の数ではない。しかし他の3人の実力がわからない以上――シエーアとジェッターはお互いの実力を知っているが――フォローが必要かもしれないと言う意識も生まれる。自分がどれだけ食い止められるのか、どういう立ち回り方が一番いいのか考えていると……
「この程度の相手には勿体無いですが……数を減らします」
「おお?今度こそ奇跡の業でやつらを倒して、シエーアとの違いを見せつけてくれるのか?」
「うー。そのうちすっごい呪文を覚えてあっと言わせてやるんだから〜」
 しかし、ティオレが構えたのは聖印でなくクロスボウ。それを《生ける死者》の群れに向ける。
「――邪(よこしま)なる者に神の鉄槌を――」
 言葉と共に放たれる6発のボルト。それらが《生ける死者》に命中し……貫通していく。ボルトの命中した場所はまるで杭を打ち込まれたあとの様に周辺が消滅していった。残ったのはわずか5体ほど。
「ひゅ〜、やるねぇティオレちゃん」
「あー……いや、質問はあとだな。まずは敵を倒してからだ」

「しかし、ティオレがクロスボウを、それも両手で扱うなんて驚いたな」
「だよね〜。それに、あの最後の奴。凄かったねー」
「あれは教会の特別製です。《悪魔》や《生ける死者》といった者に効果があるものです」
 残った《生ける死者》を片付け、今は教会の周囲と中を探り、先ほどの音の手がかりを探していた。
「クロスボウ持ってるのを見たときゃびっくりしたぜ」
「二人は見てなかっただろうけど、カッコよかったんだよ?こう、左右の敵にシュパパパパって」
「いえ、あれは効果があまりありませんでした。やはり、非生物よりも生物の方が急所が多い分、制圧が楽ですね」
「…………」
 そんなことを無表情で淡々と語るティオレを、他の3人は呆然と見つめる。
「ティオレちゃんってなんていうか……変わってるな」
「人は見掛けによらないとはいうけど、ね」

「これかなぁ?……おーい、こっち来てくれ〜」
 教会のとある1室。そこは床が崩れており地面が見えるのだが……地面に穴が開いていた。その穴は奥へと続いている様だった。
「うわー、あから様に怪しいねぇ」
「なんでこんな所に穴があるんだろう?」
「んー、街の人が数日前にちょっと大きな地震が有ったっていってたから。それで……」
「この下にあった洞窟に繋がったって?」
「まぁ、今日はここまでだな」
 今回は物音の不気味な物音の正体を確認するのが目的であったので、装備は最低限しか持ってきていなかった。この穴がどのくらいの長さなのかはわからないが、装備もなしに突入するのは危険である。今日は宿に帰り、明日装備を整えてから突入するべきだろう。そう判断し、一応街の警備隊に警戒を呼びかけ、四人は宿へと帰還した。


Written by 斎祝 (03.12.10)
前へ目次へ次へ
inserted by FC2 system