新緑の大樹亭に帰還してきた4人をマスターが出迎えた。
「おっ、無事に帰って来たな。冒険の成功ってのは生還する事がまず第一だからな」
「まあ当然だね、ボクがいるんだからね」
シエーアは空いてるテーブルを探しながら答えた。
「シエーアはなにもしていないけどな、その点オレッチは役にたったぜ」
早くも酒を注文しながらジェッターはシエーアに突っかかっていく。
「なに言ってるんだよ、ジェッターだってなにもしてないじゃん。
今回活躍したのはティオレだよ、あのクロスボウの両手撃ちかっこよかったな」
見つけた席に座りながらシエーアもやり返す。
「そんなことありませんよ、全ては神のお導きです」
すこし照れながらティオレも席に着く。
「ではいつものじゃれ合いもその辺にして明日の予定を決めようか?まず朝は洞窟に入るためのアイテムの買出しだな」
宿に着くなり自分の部屋に装備を置きに行ったクオンが階段を下りてきながら3人の傍にやってきて会話を進めた。
「明日はあの穴を探索するんだろう、でもって出てきたアンデットをティオレちゃんが倒す、それ以外なにを決めるってんだよ」
そう言いながらジェッターは笑った。
「もっと真面目に考えてよ、ジェッター、お酒もお預けだよ」
シエーアはジェッターのジョッキを取り上げた。
「そうですね、明日は今日以上に厳しいはずですから……私にもう少し力があれば……」
うつむきかげんにティオレは答える。
「いっそのことメンバーを増やしてみようか?マスターに頼めば助っ人ぐらい紹介してもらえるかもよ」
何気なくシエーアは提案してみた。元々ジェッターと二人で冒険をしてきたシエーアにとっては普段の選択肢の一つに過ぎなかった。
「そうだな、人数は多いほうがいいな、今日みたいに沢山のアンデットが出る可能は高いからな、要望はシエーアよりも優秀な魔法使いかな。
ってことで明日は人数増やして教会地下探索、後はその場で考えよう」
ジェッターはこれで今夜の会議は終わりと言わんばかりにシエーアからジョッキを取り戻して中身を一気に飲み干した。
「では私も教会の知り合いに声を掛けてみます、それでよいですよね?クオンさん」
「あぁ」
考え事をしていたクオンは生返事をした。
「では決まり、ちょっくら言ってくる」
空になったジョッキを持ちながらジェッターはマスターと交渉を開始した。
ジェッターとマスターのやり取りを見ながらクオンはあの巻物の一文を思い出していた。
『一人が裏切り、一人が死ぬ』