JOL 的 リレー小説


タイトル未定



 現在進行中のリレー小説はこちらからどうぞ。(直リンは何故かはじかれる模様)





二周目五番



―ドカッ!!―
「あ〜〜〜っ!!!! 止まれ!止まれ!!」
―ゴンッ! バキッ! ドサッ!!―
「うぎゅぅ……」

 思考の奥底からいきなり現実に引き戻されたクオンは、情けないうめき声を上げた主をクッションにしてしまった。クオンは眼前に居る、その少年っぽい顔立ちの少女をマジマジと見つめた。確かに少年っぽい顔立ちではあるが、唇は赤く艶があり、白い肌にうっすらとピンクの頬も柔らかそうな少女特有の肌の色をしていた。……とみる間に、そのうっすらとしたピンク色が朱に染まっていった。
「タタタ……ちょ、ちょっと〜!! いつまで乗っかってるのよー!!」
 理不尽な痛みへの怒りのためか、恥じらいのためか、顔を赤らめたシエーアは先ほどまでまん丸だった目を三角にして、背中に倒れこんだクオンを横目で睨みつけている。
「あ!……ごっ……ゴメン!!!」
 クオンは、慌てて立ち上がった。
 隣から、やけに芝居がかった神妙な声がした。
「お〜いおい! 思いつめて道で後ろから押し倒すほどコイツが気に入ったんなら、それならそうとオレッチにヒトコト言ってくれれば……アイタッ!!」
 益々顔を赤くしたシエーアの一蹴りで、最後まで言葉を続けることができずに、ジェッターはスネを押さえピョンピョンと飛び跳ねた。
「何しやがんでぃ!」
「うるさーい!!! 黙れ!物凄い勢いで《眠りの呪文》をかけてやろうか!?」
「へ! 何赤くなってんだよ、女の子みたいにさぁ」
「なッ!なんだとー!!!」
 シエーアとジェッターはクオンを挟んで右に左にと追いかけっこを始めてしまった。やっとのことで、その中心から開放されたクオンは、倒れこむ際に放り出してしまった荷物を拾い上げようとした。荷物の隙間から、「巻物」が顔を覗かせていたのを素早く押し込み顔を上げると、ジェッターはまだシエーアに小突かれていた。その騒ぎの奥で、ティオレが物静かな視線をクオンの顔に投げかけていた。今まではその視線は空気のように気にならなかったのだが、今はクオンの周囲に温度変化をもたらす視線に感じられてきた。
 巻物を持っている事を誰かに見られただろうか……。
 ティオレに……。

「しー! し・ず・か・に!!!」
 2度目の静止の声を上げたエルは、杖を掲げ、仁王立ちのままの姿で教会墓地への道から外れた木立の方を見つめている。
「普通さぁ、私が止まれって言ったんだから『何かあったか』とかって思わないワケ!?」
 シエーアとジェッターが取っ組み合ったまま、クオンとティオレもまたエルに視線を移した。
「何かあったか?」
「何かあったの?」
 間をはずした質問を、シエーアとジェッターが同時に発言した。
「あるから、立ち止まったんじゃない。誰かにつけられてるかも。」
「つけられてる? そんなバカな。オレッチは気づかなかったぞ!?」
「『誰か』なのか、『何か』なのかはっきりしないけどね。ティオレは感じない?」
「……私が?ですか? いえ、何も感じませんが……」
「ふうん……」
 意味ありげな生返事をして、エルは無造作に木立に足を踏み入れようとした。
「まて、確かに……微かに声がする。オレッチが見てくるから、待ってろ。」
 ジェッターは、その大きな背を低くし、注意深く木立に足を踏み入れていった。その背中が木立に隠れはじめた時、クオンにも何かが聞こえた。
 
―ぁぅぁぁぁ……ん、あうあああ……ん……―

「子供の泣き声?」
 ティオレが疑問のように言った時には、シエーアにもその声が聞こえはじめたようだった。
「ボクには獣の鳴き声みたいにも聞こえるけど?」


Written by Chiha (04.01.14)
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