JOL 的 リレー小説


タイトル未定



 現在進行中のリレー小説はこちらからどうぞ。(直リンは何故かはじかれる模様)





三周目四番



「ちょっとジェッターの様子を見てくるよ」
 とシエーアが教会に向かって宿を出て行ってしまったので残された3人は暫く無言でいた。
 疲れもあったので誰もしゃべらなかったがここ数日の会話はシエーアとジェッターによって成り立って居た事にクオンは改めて実感した。
「それにしてもジェッターの復活にいくら必要なんだろう……」
 クオンはいつの間にか考え事を口にしていた
「今回はお金掛からないと思いますよ」
 お茶を飲みながらティオレが答える。
「そっ、そうか金が掛からないのか、今回荷物を取られたからこれ以上の出費はきびしいからな」
 クオンは考えを声に出してしまったのか判らなかったので驚きを持ってティオレの顔を見た。
「なにティオレに見惚れてるの?それにしっかりと声に出していたわよ」
 からかう様にエルが微笑みながら会話に参加してきた。
「そうか、声に出していたか、しかし魔術師というやつはしっかり見てるというか聞いているんだな、反応がシエーアと変わらんな」
 と言いながらクオンは照れ笑いをした
「全ての魔術師がそうとは限らないけどね、ところでさっきの話だけどクオンの荷物にはどんなものが入っていたの?」
 荷物の中身に興味があるらしくエルが質問してきた
「荷物……なんでそんなこと聞くんだ?」
「だって敵は明らかにクオンの荷物を狙っていたじゃない?そのせいで私たちはあんな苦労をしたんじゃない、知る権利は有ると思うんだけどね」
「別に大した物は……」
 言いかけてクオンは言葉を区切った。
『そうか!やつらの狙いは巻物だったのか、しかし巻物のことを言うべきか』
「ボクも荷物の中身が知りたいな、なにか重要な物、例えばマジックアイテムとか持ってたりしたとか」
 いつのまにか帰ってきたシエーアがみんなの居るテーブルに向かって歩き始めた。
「お・おかえりシエーア、ジェッターの様子はどうだった?」
 動揺しながらクオンは話題を変えようとした
「ジェッターは死んだよ、なんで?なんでジェッターが死ななければいけないの?」
「ジ・ジェッターが死んだのか?それは本当か?……本当にあの巻物の予言通りになったというのか……」
 最後は消えるような声でクオンは答えた。
「なんでもいいから知っている事を教えてよ」
「実は……、盗まれた荷物の中に不思議な巻物があったんだ、それはこれからのことが予言めいた文で現れるんだ、例えばこの街で仲間を集めよとか……」
「それで最後の文にはなんて書いてあったの?」
 シエーアはクオンに詰め寄った
「一人が裏切り一人が死ぬって書いてあったはずだ、まさにジェッターが裏切りジェッターが死んだことに他ならない……」
 胸の痞えがとれた様にクオンは言った。
「そんな重要な巻物、取られちゃったの?普通は肌身離さず持ってない?」
 あきれたようにエルは言い放つ。
「で、クオンは巻物に書いてあったからボクたちとパーティー組んだの?それから今後どうするの?その巻物が無ければ何も出来ないの?」
 畳み掛けるようにシエーアは質問する。
「あのなー俺は巻物が無くなろうが関係ない。逆に薄気味悪い巻物が無くなって清々してるんだ。そうだよ、清々してるんだ」
 最後のほうは自分に言い聞かせるように答えた。
「そうだよね、さすがは選ばれただけはあるね、そうこなくっちゃ」
 一人納得しているシエーアに今度はクオンが質問する番だった
「シエーアはなにか知ってるのか?知ってることがあるなら教えてくれ」
「え〜と、なにから言えばいいのかな……最近西の方角に紅い星、紅亡の星って言うんだけどあれに関係あるんだよ、『紅亡の星近づくとき、この世に災いをもたらすモノ蘇る』
 ある有名な預言書の一文なんだけどね、この災いを防ぐ方法があるんだよ、『3つの鍵と1つの標に導かれし者達、大いなる災いに立ち向かわん』って予言なんだけど、その標が巻物ってワケなのさ」
 シエーアは話終えてエルが持ってきてくれたお茶を一口飲んだ。
「シエーアはなんでそんなに知ってるんだ?」
 クオンは不思議そうにシエーアの顔を見た
「あまり時間がないけどしょうがない、今度はボクのことを話してあげよう」
「段々態度が大きくなってきたわね、まあその方がシエーアらしいけどね」
 エルは微笑みながら言った。
「それってどういう意味?これでもこの道ではボクの方が先輩なんだから」
 シエーアは胸を張って話続けた
「ボクの両親は共に冒険者だったんだ、だからボクも小さい頃から一緒に冒険していた、そして兄さんも……」
 声のトーンが段々下がっていったが意を決して話し続ける
「ある日、兄さんが占い師から巻物をもらったんだ、それには兄さんの周りで起こることが次々に浮かんでくるものだった。いつしか兄さんは巻物無しでは自分では何も判断出来なくなった、まるで巻物に囚われている様に……その後、その巻物が預言書の中に出てくる標だと判った兄さんは自分がこの世を救う勇者だって思い込んでしまって3つの鍵を探し始めた、1つは紅蓮鳳凰剣って呼ばれてる紅い剣なんだけど……兄さんは紅蓮鳳凰の剣の所有者リガロ・セストールって人を殺して奪ってしまったの、その行為を止めようとした両親まで殺してしまって……手段を選ばなくなったんだ。
 そして巻物には新たな文は現れた『The End』とそれ以降まったく新しい文は現れなかった、きっと兄さんは道を踏み外したからだと思う。
 そこでボクとジェッターは兄さんから巻物を取り上げて捨てたんだ、そして兄さんは巻物を探すために一人で出て行ってしまった」
「なるほどな、俺は世界を救う勇者になりそこねたのか、そんな柄じゃないけどな。」
「ねえクオン、さっき言ったように巻物にどんな予言が現れようともそれに頼ることの無く自分で決断を出せる勇者にならない?」
「そうだな、シエーアに乗せられてみるか、それも運命だな。手始めに巻物の回収から始めるか?」
 クオンは椅子から立ち上がり伸びをした
「まずはこの街から出ることかな、それも急いでね。おそらくさっきの連中がまた襲ってくるはずだから、それからエルもティオレも来る?」
「もちろん乗りかかった船だもん私は付いていくわよ、ティオレは?」
 ティオレはその場で祈り始め、神の啓示を待った。
「私も付いて行きます、神のお許しも出ました」
 そしてクオンとシエーア・エルの3人は裏口に用意していた馬車に向かい、ティオレは荷物を取りに神殿へと向かった。
 馬車にたどり着くと一人の男が待っていた。
「遅い、なにやってるんだよオレッチ待ちくたびれちまったよ、あれ?愛しのティオレちゃんは?」
「ごめーん、ティオレは自分の荷物を取りに帰ってるから街外にでる門で待ち合わせ予定」
「な・な・なんでジェッターがここに……」
「なんでってそりゃないぜ、せっかく新しい装備を買ってきてやったのに……ってシエーア、お前なにかしたな?」
「えへへ、話の流れで死んだことにしちゃったの、てへっ」
「てへっ、じゃねえ〜よ。とりあえず早く馬車に乗りな巻物を狙って追手が来るぞ」
 シエーアの頭を軽く小突きながらジェッターがみんなを急かした。
「巻物もあるのか?まったくこの世は驚きで満ちてるな」
 クオンは改めてジェッターと握手しながら答えた。
「だってクオンが大事そうに巻物を抱えてるってジェッターが教えてくれたから気になってしょうがなかったんだもん、一応ダミーでボクの手書きのスクロールを入れたおいたけどね、もしかしたら奪った奴等がそのダミーに気が付いて追ってくるかも、だから早く出発しよう」
 懐から巻物を取り出しクオンに渡しながらシエーアは馬車に乗り込んだ。


Written by 風花雪月 (04.03.09)
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